現代短歌の先駆者であり、今では不動の人気を確立している歌人、穂村弘。
そんな穂村弘が「食べ物」について真剣に、時に可笑しくなるくらい考えたエッセイがあります。
その名も『君がいない夜のごはん』。
今回は、傑作エッセイ『君がいない夜のごはん』のあらすじと読んだ感想をご紹介します。
『君がいない夜のごはん』の情報

- タイトル:『君がいない夜のごはん』
- 著者:穂村弘
- 出版社:文藝春秋(文春文庫)
- ジャンル:エッセイ
- 読了日:2023年6月18日(再読)
あらすじ
歌人、穂村弘の日常にひそむ「食べ物」にスポットを当てたエッセイ。
なんと、このエッセイ、元々は料理雑誌に連載されていました。
しかし、美味しそうだったり、食欲が湧いてきたり、といったことがないのです。
その代わり、「え?」という驚きが連発。
共感と驚きが程よくミックスされた、穂村弘の食べ物にまつわるエピソードが58編収録されている傑作エッセイ。
感想
これを本当に料理雑誌に連載していたのだろうか?という驚きがまずやってきます。
料理に関心を持って雑誌を買った人たちは、どういう気持ちで穂村さんのエッセイを読んだのか気になります。
特に「逆ソムリエ」とか……。
そのくらい、異色な食べ物エッセイでした。
元が連載なので、1編が3~4ページくらい。
それぞれのエピソードが独立しているので、短い時間に好きなところからサクッと楽しめます。
ところどころにちりばめられている穂村節は、言葉のリズム感が心地よくてさすが歌人、というところ。
そんな穂村さん、歌人としてではなく、ベッドで菓子パンを食べる人として認識されているのだから、穂村さんの持つエピソードの力の強さがうかがい知れます。
言葉については独特の優れたセンスを持つ穂村さんが、食べ物に「ダサい」ものがあることにドキドキし、考え込んでしまう姿には何だか安心しました。
「ダサい」食べ物って何?と考えてしまう人は多いでしょう。
あんなに言葉のセンス抜群な穂村さんも、さすがに理解できないセンスの領域があるのか、と親近感を覚えてしまうのです。
ダイエットに奮闘し、ショコラティエやパスタとギリギリの闘いをする、必死な穂村さんを見ていると、あれ?自分にもそういうところがないだろうか?と気づかされるエッセイです。
それにしても「逆ソムリエ」には困ったものです。
今まで「逆ソムリエ」なんて脳内にはいなかったのに、このエッセイを読んでから「逆ソムリエ」の影がチラチラ見えてしまうのです。
穂村さん、「逆ソムリエ」の消し方を教えてください。
まとめ:穂村弘のエッセイを手軽に読みたい人におすすめ
3~4ページの中に、穂村弘のエッセンスである、共感と驚きがギュッと凝縮されているエッセイ、『君がいない夜のごはん』。
面白いだけでなく、穂村弘の言葉選びの巧みさにも触れられるいいエッセイだと感じました。
人気歌人、穂村弘の短歌以外の言葉を味わいたい方におすすめです。
短時間で手軽に穂村弘の世界を笑いとともに楽しめます。
短歌も詠めて、エッセイも面白いなんて、穂村弘はすごい歌人です。
ただベッドで菓子パンを食べている人ではないですよ!
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